ミルトン・ナシメントの代表作として知られる1972年の名作「CLUBE DA ESQUINA=街角クラブ」。ミナスの音楽コミュニティの仲間達と作成されたこのアルバムは、ミルトンほか、ボルジェス一家、ホベルチーニョ・シウヴァ、ヴァギネル・チゾ、タヴィーニョ・モウラら、後にソロ・アルバムをリリースする素晴らしい才能が集結し、互いのアイディアを持ち寄って作成された当時のミナス音楽シーンの充実と先見性、特異性を凝縮させたようなアルバムである。例えばA&M(US)からリリースされたMILTON NASCIMENTO「MILTON」収録Ver.の"CRAVO E CANELA"と、この街角クラブの同曲を聴き比べてほしい。前者がグルーヴ感に溢れたシンプルなカタルシスを呼び起こすのに対し、後者は何度聴いても若干の違和感を残しつつ、しかし奇跡的な美しさを保って調和している。今となってはサンプリング・ネタとしてブラジル音楽ファン以外からも広く知られる「TODO QUE VOCE PODIA SER」の位相、そして楽曲構造の歪さ。ARTHUR VEROCAIの1STアルバムがサイケ文脈で最高峰の評価を得るのであれば、街角クラブも同じ程度、いやそれ以上の評価を与えてもいいと思う。
+ + +
● BETO GUEDES, DANILO CAYMMI, NOVELLI, TONINHO HORTA / SAME TITLE
THINK! / JPN / CD / THCD158 / 2,520円(税込)
そんな「街角クラブ」に並ぶ作品があるとすればトニーニョ・オルタの1ST、そして本作。この2枚を挙げることができる。
「街角クラブ」を組成した4人のミュージシャン、ベト・ゲヂス、ダニロ・カイーミ、ノヴェーリ、そしてトニーニョ・オルタが、それぞれの楽曲をこのアルバムの為に持ち寄り共同名義でリリースしたのが本作。1973年にODEON(BRASIL)からリリースされたオリジナル・アルバムの世界初CD化である。
繊細なメロディと複雑かつ明快なコード・ワークのトニーニョ、プログレッシブなベト、メロディ・メイカーとしての抜きん出た才能を発揮するダニーロ、寡作なものの素晴らしい楽曲を作るノヴェーリ。鬼才による四者四様の個性が迸るトラックは聴き流すことを決して許さず、だからといって核心を掴もうとしてもするりと逃げていく。
いつ聴いてもまるで新譜のように新鮮な驚きをもって聴くことのできる魔法のような作品。まったくもってこの時代のミナスは恐ろしい!