● FLORENCIA RUIZ / LUZ DE LA NOCHE ~夜の光
YAMAHA / JPN / CD / ¥2,800
遂に日本盤が出ましたね。アルゼンチンの女性シンガーソングライター、フロレンシア・ルイスの最新作。
作品詳細については、この非常に語るべきところの多い作品を短くまとめたオフィシャルのコメントを抜粋しましょう。
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ジャキス・モレレンバウム、ウーゴ・ファトルーソ他豪華ゲストを迎えた、従来作と一線を画すスケール大きな最新作にして最高傑作。【日本盤ボーナストラック収録】
深く澄みきった歌声と、独特のオリジナリティあふれるミニマムな音。アルゼンチンのエクスペリメンタル・ポップスの女王フロレンシア・ルイス最新作。
ミルトン・ナシメントとの共演や毎年の来日公演で、今日本で最も人気の高い南米を代表するアーティストのウーゴ・ファトルーソ(ピアノ)、坂本龍一との共演でも有名なブラジルのジャキス・モレレンバウム(チェロ)を初め、国内外から様々なジャンルのアーティストをゲストに迎えた完成度の高いアルバム。アルゼンチン、メキシコ、アメリカ、日本の共同制作で、2年以上をかけて制作された最高傑作。
多くの傑作を世に出してきたカルロス・ビジャビセンシオがアレンジとプロデュースに全面参加。他にも現代フォルクローレ界の重要アーティストであるフアン・キンテーロ、日本を代表するタンゴ・バイオリニストの会田桃子をはじめ、数多くの重要ミュージシャンが参加。
「アルゼンチンの音響派アーティストとか、アルバムのレコーディング手法からくるのか実験的とか評されるが、私はそうは思わない。私のフロレンシア・ルイスの印象は、ストレートに感情が伝わってくるシンプルなシンガーソングライター。彼女の魅力は、声につきる。」(オノセイゲン)
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5月にプロモーションで来日した際に行われたサラヴァ東京でのライブについて拙文をラティーナ誌に書かせていただきました。
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東京でも例年より早い梅雨入りが発表された5月27日の金曜日。渋谷のSARAVAH東京で行われたフロレンシア・ルイスのライブに行ってきた。
この日は5月10日に行われた名古屋ライブ、29日の原宿と異なり、バンド編成というのが大きな見所であった。メンバーは鬼怒無月(g)、佐野篤(b/cello)、ヤヒロトモヒロ(per)、鶴来正基(p)。5月初旬に日本に到着したフロレンシアは、12日からの松田美緒&ビスコイット・グローボの北海道ツアーに同行。このビスコイット・グローボというバンドが鶴来正基を除く上記のメンバーである。更に彼女の最新作「LUZ DE LA NOCHE(夜の光)」の世界を再現すべく、ピアニストとして鶴来が加わった。
立ち見が出るほどの大盛況。SARAVAH自体の雰囲気の良さも手伝い、いい具合に会場が温まった頃、バンドとともに銀髪に白いシャツのフロレンシア・ルイスが現れた。
フロレンシアのギターが鳴り始めると「LUZ DE LA NOCHE」の世界がそこに広がる。夜の暗闇と一筋の光。搾り出すように歌うフロレンシアの歌声が月の光のように、実に幻想的だ。ビスコイット・グローボのライブではガンガン主張し合う鬼怒、佐野、ヤヒロも、この日はそれぞれに仕事人の顔。ソロ回し以外はほとんどプロフェッショナルなバッキングに徹していた。そしてこの日特別に加わった鶴来。あまり前に出ず絶妙な距離感で、フロレンシアの要望に応えていくピアノには感服した。
だが今思い返してみると、印象に残ったのは、やはりフロレンシアと彼女が作る世界ばかりであったことは否めない。音源で何度も聴いてわかっていたが、ギターとヴォーカルだけでパーフェクトな空間を作ることの出来る才人であることを改めて強く認識させられた。加えてその印象を強くしていたのは、彼女のステージ上での姿である。MC時の無邪気な少年のような表情とは打って変わって、ギターを持って歌う姿はまるで祈りを捧げているよう。苦しみの中に現れる崇高な顔をしたフロレンシアの存在感は、やはり選ばれし者のそれであった。決して太陽のような明るさではなく、闇があるからこそ美しく妖艶に光る月のような存在。それは美しいと思うと同時に、心の奥底に意識を集中させるような非日常への扉でもある。
そんな彼女の魅力をよく言い当てている歌がある。松田美緒との共作曲"Plateada"からの一節だ。
いたずらに 光る 銀の髪 瞳 子供と賢者の目
いつの間にか 迷い込んだ
君の髪の間 空と土の間
La Plata(銀)
第二セットで聴かせた二人のデュオによるこの曲が、個人的にはこのライブ最大のハイライトとして強く心に刻まれた。
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