● TRÍO FAMILIA / TRÍO FAMILIA
昨今のアルゼンチンのコンテンポラリー・フォルクローレ・シーンと、ブラジル南部~ミナス~サンパウロ・シーンの連帯を象徴するようなグループです。
トリオ・ファミリア=ファミリー・トリオ。何とも飾り気のない名前だが、その3ピースを構成するのはいずれも素晴らしい音楽家。マルコス・アルチェッティはバンダ・エルメチカの一員として、またカイマンタ・カイマンといった独自性溢れるグループのリーダー/作曲家として活躍するベーシスト。その妹アナ・アルチェッティも同じくバンダ・エルメチカの一員、そしてハヴィエル・アルビンやフェデリコ・アレセイゴールらのコンテンポラリー・フォルクローレ・シーン最重要作において、その清廉な歌声を聴かせてくれた隠れたキーパーソンである。そしてそのアナの夫であるのがアカ・セカ・トリオの一員として知られるコンテンポラリー・フォルクローレ・シーンNo.1のパーカッショニスト=マリアノ・カンテーロ。まさに家族だけで構成されたトリオによる初名義アルバムである。
2012年の3月から約半年間をかけてレコーディングされたという本作は南米のフォルクローレがベースとなっているが、加えて、ブラジル音楽やジャズといったモダン・ポピュラー・ミュージックからの大きな影響を受けているのが何よりも特徴だ。アナの清流のようなピアノとヴォーカルを軸に、心地の良いハーモニーを伴いながらもプログレッシブに進行する#2、詩人としても高名なマルティン・ラニンクエオがゲスト・ヴォーカルで参加した#6・・・。ハイメ・ロス(ウルグアイ)、シモン・ディアス(ヴェネズエラ/カエターノもカバーした"満月のトアダ")といった南米各地のフォルクローレを取り上げつつ、どこか1970年代以降のエリス・レジーナ・サウンドを彷彿させるエレクトリック・ピアノを使用した浮遊感溢れる演奏を繰り広げていく。その音楽的邂逅の象徴とも言えるのが#8だろう。ホジェリオ・ボテル・マイオらを引き連れてアカ・セカ・トリオとも共演するなど、近年地域や国境を超えて目覚ましい活躍を続けるブラジル南部サンタ・カタリナ州出身の女性ヴォーカリスト=アナ・パウラ・ダ・シルヴァをゲストに迎えたこの曲は、ブエノスを中心としたアルゼンチンのコンテンポラリー・フォルクローレ・シーンと、ブラジル南部~ミナス~サンパウロの親和性を強く感じさせてくれる。
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