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カテゴリー「BRA>MINAS」の記事一覧

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LEONARDO MARQUES / CURVAS, LADOS, LINHAS TORTAS, SUJAS E DISCRETAS


LEONARDO MARQUES / CURVAS, LADOS, LINHAS TORTAS, SUJAS E DISCRETAS
【国内盤CD】 2,500円(税込)

「 エリオット・スミスと街角クラブの出会い、そんなふうに友だちに伝えたくなるミナスのSSW。オープニング2曲の流れから最高で、特別な空気が流れている“Brilliant Blue”なアルバム。ロー・ボルジェスのカヴァーも良いが、「Meus Pés no Chão」などは本当にエリオット・スミスがよみがえったかのよう。そしてタイトル曲の素晴らしさと言ったら。胸かきむしられるメランコリア。ウルグアイやアルゼンチンのフォークをも思わせるが、Great 3のファンに強く推薦したい(僕はとりわけ『Romance』を思いだす)。チェリー・レッド〜ネオアコ好きにも。」
ー 橋本徹 (SUBURBIA)


「 もう二度と戻ることのない時の彼方、遠く離れた場所への想いを音にしたかのような、そんな音楽だと思う。 社会生活に忙殺された青春の憧憬を見たような、非常に刹那的な気持ちになる作品である。」
ー Lamp 染谷大陽


ミナスのシンガーソングライター、レオナルド・マルケス待望の2ndアルバム。ほとんどの楽器と歌を自らでアナログ・レコーディング。ミルトン・ナシメント、ロー・ボルジェスらクルビ・ダ・エスキーナ直系の美しいメロティに、エリオット・スミスのメランコリアまでを呑み込んだローファイな宅録インディーフォーク・サウンドで、ジャンルを超えた音楽ファンを魅了する新しい才能が、ついに日本盤でリリース。ロー・ボルジェスの名曲『ウン・ジラッソル・ダ・コル・ヂ・セウ・カベーロ』のカバーを含む全9曲に加え、日本盤だけのボーナストラックを収録。

ブラジルはミナス・ジェライス生まれのシンガーソングライター、レオナルド・マルケス。ブラジルでもっとも影響力のあるインディーロック・バンド=DIESEL(のちのUDORA)のギタリストとしてロサンゼルスを拠点に活動後、帰国。現在のブラジル・インディー・フォーク・シーンにて台頭するバンド「TRANSMISSOR」の中心メンバーとして、またレコード・プロデューサー、レーベル・オーナー、スタジオ・オーナーとして多彩な活動を見せる。本作はレオナルドの2NDアルバムで、ブラジルでは彼のライブや限られた地域のみでCD-Rでリリースされている作品であるが、ブラジル現地のメディアでは既に高い評価を得ている。様々な生楽器を自ら演奏、アナログ・レコーディングで多重録音し丁寧に編みこまれていったサウンドと、消え入りそうなヴォーカルが織り成すまどろむようなサウンドスケープは、レオナルドが最も影響を受けたアーティストと語るエリオット・スミスに通ずるロマンティックなメランコリアを感じることが出来る。加えて、等身大の魅力を感じさせるフォーキーなサウンド、そしてエヴァーグリーンな魅力に満ちた美しいメロディは、同郷の偉大な先輩であるミルトン・ナシメント、ロー・ボルジェス、ベト・ゲヂスといった「街角クラブ」の伝統を受け継いでいるようにも思える。日本盤オンリーのボーナストラックとして、彼の未発表音源から美しくも儚いピアノとメロトロンの演奏を収録。

歌詞/対訳付き 日本語対訳:荒井めぐみ
ライナーノーツ:レオナルド本人へのインタビュー



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JENNIFER SOUZA / IMPOSSÍVEL BREVE


JENNIFER SOUZA / IMPOSSÍVEL BREVE

11/19に国内盤としてコアポート・レーベルから発売されるジェニフェル・ソウザの初ソロアルバム『永遠でないもの』のライナーノーツを執筆いたしました。
http://www.coreport.jp/catalog/rpop-10006.html

アントニオ・ロウレイロ・バンドのジャズメンががっちりサポートした、ブラジリアン・ニューフォーク。今のミナスを象徴するような実に高いクオリティを誇る作品です。



I wrote the liner notes for Japanese edition of Jennifer Souza 's 1st album "Impossível Breve" which will be released by CORE PORT label on Nov 19.
I think that "Impossível Breve" is symbolic of high-quality music scene of Minas Geraes

というわけで、今年もたくさんのリリースがあったミナスの新しい音楽を聴くイベントを国立のノートランクスさんでやります。こちらも宜しければ是非。レジュメ作ります。
http://unimusica.blog.shinobi.jp/event/masterclassofmusicminas

MAKELY KA / CAVALO MOTOR


● MAKELY KA / CAVALO MOTOR / CD / 2,376円(税込)

アントニオ・ロウレイロやクリストフ・シルヴァといったミナス新世代を代表するアーティスト達と共作を重ねる作曲作詞家=マケリー・カー。1970年代にミルトン・ナシメントやロー・ボルジェスにより提唱されたゆるやかなムーヴメント「クルビ・ダ・エスキーナ」の2000年版「ヘシクロ・ジェラウ」。その中心にいたのがクリストフ・シルヴァ、パブロ・カストロ、セルジオ・ペレレ、そしてこのマケリー・カーといった現在のミナス新世代シーンの中心として活躍する面々である。マケリーはその代表格としてクリストフ、パブロとのヘシクロ・ジェラウの旗揚げ的作品『オウトラ・シダーヂ』に参加。その後もソロ・アルバムを2枚残すほか、主に詩人としてミナスの芸術的音楽シーンの柱として現在まで活躍。アントニオ・ロウレイロ、クリストフ・シルヴァほか現在のミナス新世代の作品に幾度となくクレジットされている人物である。

そんなマケリーの2014年最新作がこちら。ミナス・ジェライスの広大なセルタォン(内陸に広がる旱魃地帯)を1,680キロメートル、2012年の7月から12月までなんと自転車で旅をしながら得たインスピレーションや録りためたテイクをベースに作成されたという。ユニークな経緯ではあるが、ブラジルを代表する文豪ジョアン・ギマランエス・ホーザを例に挙げるまでもなく、セルタォンはブラジルの芸術にとって欠かせない要素の一つ。詩人としての側面も強いマケリーらしい作品と言えるだろう。

マラカトゥやフォホーといったリズムに、伝統的な横笛ピファーノ、そして無骨なマケリーのヴォーカルが絡み合う、オーティックなノルデスチ系サウンドに電子音が揺蕩う「超現実的内陸サウンド」に始まり、"ガーシュインのためのバイアォン"などマケリーらしい捻りの利いた楽曲、管弦楽アンサンブルをバックにギター一本で歌う夜想曲風、ミナスの創作楽器集団ウアクチの楽器を使用した曲、「ヘシクロ・ジェラウ」~サンパウロ前衛派の流れを汲む現代音楽的な響きを包含した楽曲まで...。

音楽的な部分においてミナス新世代の粋と言える高度な部分が存分に注ぎ込まれているのは当然だが、これまで断片的にしか語られてこなかったミナスという地の音楽を、本作は地理的にも歴史的にもよりダイナミックなレンジで捉えている点が何よりも凄い点であろう。ミナス新世代の真打に相応しい、2014年を代表するモンスター・アルバムの誕生である。

Iventのお知らせ~ 4/19(sat) 現代ブラジル"ミナス派"を聴く。四ッ谷いーぐる 連続講演 第528回 開催いたします。


4/19(sat) 15:30 start @四ッ谷いーぐる 連続講演 第528回

現代ブラジル"ミナス派"を聴く。
~アントニオ・ロウレイロ、アレシャンドリ・アンドレス、クリストフ・シルヴァを中心に~


▽概要
音楽家・音楽理論家、濱瀬元彦氏が推薦するブラジル音楽を、老舗ジャズ喫茶「いーぐる」で聴く試聴会第二弾。今回は最高水準の音楽をリリースし続けるブラジル・ミナス州の音楽家の中から、その中心となっているアントニオ・ロウレイロ、アレシャンドリ・アンドレス、クリストフ・シルヴァの三人に焦点を当て、彼らの音楽を紹介します。また今回はゲスト講師としてミナスの音楽家達と親交が深く自身のレーベル=NRTよりアントニオ・ロウレイロ、アレシャンドリ・アンドレスの作品をリリースしている成田氏を迎え、活況呈するミナスのシーンについてより深く迫ります。(ギンガを中心に据えた、前回の公演についてはこちらから。)


▽日時・場所
4/19(sat) 15:30 start
四ッ谷 いーぐる
東京都新宿四谷1-8 TEL 03-3357-9857 
http://www.jazz-eagle.com/information.html


▽講師

濱瀬元彦
1952年生まれ。慶應義塾大学中退。1976年よりアコースティックおよびエレクトリック・ベース奏者として数々のジャズ・グループで活躍。録音参加作品多数。フレットレス・ベースの新しいスタイルを確立した。1982年に実験的音楽ユニット「ラーゲル」を結成し、1985年まで音楽の新しいフォーマットを模索し続けた。その後、ソロ活動を開始し、5つのソロアルバムを発表。現在は、「E.L.F Ensemble+菊地成孔」を結成して音楽の新しい可能性を切り開いている。著書は『ブルー・ノートと調性』(1992年、全音楽譜)、『チャーリー・パーカーの技法―インプロヴィゼーションの構造分析』(2013年、岩波書店)他、多数。http://www.lung-inc.com/m_hamase/japanese/japanese.html

成田佳洋 
レーベルNRT代表プロデューサー。ときどき文章。静かな音楽祭<sense of quiet>主催(東京・鎌倉・ブラジル/ミナスにて開催)。http://www.nrt.jp/index.html
同名のインターネットラジオ番組を監修・選曲。http://www.JJazz.Net  
電子書籍ERISに連載「クワイエット・ボーダー」を寄稿。http://eris.jp

※公演詳細・関連作品のリリース情報など随時upいたします。

10/30(wed) 新世代ミナス音楽トーク まとめ1 / Respirar o céu @orbit 三軒茶屋

Respirar o céu @orbit にご来場のお客様、誠にありがとう御座いました。

イベントの頭に行ったケペル木村さんとのトークについて、終了後「あれはなんていうアーティストだっけ?」「間に合わなかったのでまたやってほしい!」という問合せも多く頂きましたので、私が担当したアントニオ・ロウレイロら新世代音楽家の紹介部分はこのブログにまとめることにしました。(追記していきます 最終更新:11/12)




"Artigo de Luxo" Sergio Santos / Mulato (1998)より 
作曲 Sergio Santos 作詞 Paulo César Pinheiro
Rodolfo Stroeter (b), Tutty Moreno (dr), Guello (per), André Mehmari (p), Teco Cardoso (soprano sax) e Sergio Santos (vo/g).

ミナス・ジェライス州の南部ヴァルジーニャ生まれのシンガー・ソング・ライター(以下SSW)。ミルトン・ナシメントのアルバム『ミサ・ドス・キロンボス(1982)』へ歌手として参加したのが音楽キャリアのスタートだったようだ。プロデューサー、アレンジャー、ギタリストとして活躍するなかで徐々にSSWとしての才能を発揮し始める。自身名義でのリリースは『アボイオ(1995/廃盤)』から『リトラル・イ・インテリオール(2009)』まで6枚の作品を発表し、そのどれもが細部にまで一貫した美意識の感じられる傑作ばかりだ。母はリオ・デ・ジャネイロ、父はアラゴアス出身と、ミネイロながらブラジル各地の伝統音楽に精通しているのも特徴。音楽制作経験に裏打ちされたプロデュース能力、体全体を共鳴させたオーガニックともスピリチュアルとも形容できるミルトン・ナシメント直系のヴォーカル、技術・経験・創造性に富んだアンドレ・メマーリ、マルコス・スザーノらサポート・メンバー、そして作詞家パウロ・セーザル・ピニェイロとの名コンビによるブラジル音楽の豊かな水脈を高度に抽象化したような楽曲、そのどれもが最高水準。優れたポピュラー音楽家であると同時に優れたトロバドールとして年々存在感を高めるアーティストである。




"ESTAÇÃO FINAL" KRISTOFF SILVA / EM PE NO PORTO(2010)より
作詞作曲 Kristoff Silva
Kristoff Silva (g/vo)
Antonio Loureiro (vib/dr)
Pedro Durães (prog/acordeon)
Pedro Trigo Santanta (contrabass)
Rafael Martini (per/g)
クリストフ・シルヴァは、ミナス・ジェライス州の州都ベロ・オリゾンチ生まれのギタリスト、歌手、作編曲家。音楽理論や演劇、ダンスといった分野では教授も務める才人である。既に20年近い音楽キャリアを持ち、彼の世代における最も重要な音楽家として、既にブラジルでは認識されている。カエターノ・ヴェローゾ、エルザ・ソアーレス、ゼ・ミゲル・ヴィズニッキといった大御所をはじめ、モニカ・サルマーゾ、アルダ・ヘゼンヂ、ナ・オゼッチ、ヴィルジニア・ホーザ、ミナスジェライス交響楽団、そしてウアクチとも交流を持つ才人。アコースティックな楽器のみならず、ウアクチの創作楽器、電子音を組み合わせた緻密なアンサンブルを構築しつつ、最終的に聴き手の意識が彼の歌にフォーカスしていくようなバランス感覚は絶妙。彼よりも若い、いわゆるミナス新世代メンバーであるハファエル・マルチニ、アントニオ・ロウレイロらのバッキングも素晴らしいの一言。




"Mar deserto (com Uakti)  " Paula Santoro / Mar do Meu Mundo(2012)
作詞作曲 (Kristoff Silva/Makely Ka)
Artur Andres (arr/fl/torre/marimba d'angelim)
Decio Ramos (marimba de vidro/grande pan/darbuka/torre/marimba d'angelim)
Kristoff Silva (g/vo)
Alexandre Andres (fl)
Paula Santoro (vo)
そのクリストフ・シルヴァをカバーした楽曲を収録した、同じミナス出身の女性シンガー=パウラ・サントーロの通算5枚目となる2012年最新作。ミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタと同じく、ミナスで非常に尊敬されている創作楽器グループ=ウアクチ(Grupo Uakti)が参加。創作楽器による独特の音色はどこかエキゾチックだが、クリストフの作る楽曲の特徴である「歌本位」なバランス感覚はむしろ際立っている。それ以外にもアントニオ・ロウレイロやレオ・ミナックスといったミナス新世代勢、さらには彼らとも親交の深い現代MPBのキーマン=マウロ・アギアールらが曲提供。タイトル通り「海」をテーマにした現代の名曲ばかりが収められている。ちなみに「海」といえば真っ先に浮かぶのがドリヴァル・カイミだが、息子ダニーロ・カイミとその娘(ドリヴァルの孫)アリーシ・カイミの楽曲も収録。


"José no Jabour" Misturada Orquesta / Misturada Orquesta (2011)
作詞作曲編曲(Rafael Martini)
Mauro Rodrigues, Marcela Nunes (fl)
Alexandre Silva (cl)
Vitor Melo Lopes (oboe)
Flávio Freitas (cl)
Jonas Vítor e Estevão Reis (saxfones)
Gilberto Junior (tr)
Alaécio Martins (tb)
Leonora Weissmann, Raquel Liboredo e Leopoldina (vo)
João Antunes (el-g/g)
Rafael Macedo (p/g)
Rafael Martini (p/acc)
Pedro Maglioni (el-b)
Pedro Trigo Santana (contrabass)
Yuri Vellasco (dr)
Mateus Oliveira (vib/per)

ミストゥラーダ・オルケストラはミナスをの活動する大所帯楽団。音楽理論を専攻する教授でありミュージシャンであるマウロ・ホドリゲスがまとめ役を務め、ミナスの才能あふれるアーティストを登用。作曲/オーケストラ・アレンジ/即興/パフォーマンスといった要素を学びつつインストゥルメンタルの可能性を追求し、実際に演奏という形で実践していく、どこか研究所のような側面も持ったユニークな楽団だ。
ミナス新世代において中心人物となっているハファエル・マルチニが作曲/編曲を担当した冒頭曲は、ユニークな構成となっているものの、仲間達による集まりらしく、リラックスしたなかで心底音楽を楽しんでいる雰囲気が伝わってくるようだ。これ以外のトラックではオリジナルのほか、アイルト・モレイラ、アントニオ・ロウレイロ、トニーニョ・オルタ、チャーリー・パーカーの楽曲をカバー。ゲストでトニーニョ、ロウレイロ本人ほか、サンパウロ器楽音楽シーンの中心人物=ベンジャミン・タウブキンも参加している。
こちらで全曲試聴できます。



"Baião do Caminhar" Rafael Martini / Motivo (2012)
作曲 (Rafael Martini)
Rafael Martini (p/vo)
Alexandre Andrés (fl)
Joana Queiroz (clarinet)
Jonas Vitor (saxofone tenor)
Felipe José (fl)
Trigo Santana (contrabass/cello)
Antonio Loureiro (dr)
Yuri Vellasco (dr)
Edson Fernando (per)
Leonora Weissmann - (vo:track #2)
アントニオ・ロウレイロらとともにミストゥラダ・オルケストラやグルーポ・ハモといったバンドで先鋭的な活動を続けてきたアーティストでもあり、才能あふれるミナスの若手たちの間でも一つ抜けた存在である。初のソロ・アルバムとなった本作は、ハファエルが日頃より活動する仲間たちとともに都会から離れた田舎に集まり、短い期間でレコーディングされたという。優秀な女性歌手でありハファエルの奥様でもあるレオノラ・ウェイスマンが素晴らしいスキャットを聴かせる"Baião do Caminhar"が、まずはオススメだ。
こちらで全曲試聴できます。


"Coreia" Antonio Loureiro / Antonio Loureiro (2010)
(作詞作曲) Antonio Loureiro
Fabiana Cozza (vo)
Daniela Ramos (rum-pi/taboca)
Mateus Bahiense (rum/taboca/gan) 
Antonio Loureiro (dr/g/p/marimba/le/sinos/unhas/tupa/xequere)
Pablo Souza (bass)
Mauricio Loureiro (cl)
Felipe Jose (violoncelo)
Daniel Pantoja (fl)

ミナス新世代の代表格であり、今年の来日公演でもその類稀なる音楽的才能(の一部)を見せてくれたロウレイロの1st。ここで一つ明らかにしておきたいのは「ミナス」といえど、いわゆる「ミナス・サウンド」の象徴とされるようなミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタからの音楽的影響が、実はあまり感じられないことだ。上記のクレジットを見てもらえばわかるとおり、ロウレイロはマルチ・インストゥルメンタリストだが、専門は打楽器類。巧みなドラム、パーカッション、マリンバを軸にしたこの曲は、作曲面においてもロウレイロらしさが出ている。

IRENE BERTACHINI / IRENE PRETA, IRENE BOA


■ IRENE BERTACHINI / IRENE PRETA, IRENE BOA

ミナスの新世代からまたまた新たな才能=Irene Bertachini(イレーニ・ベルタチーニ)。室内楽のような編成をバックにしなやかな歌声でつづる珠玉の楽曲群はネオ・フォルクローレにも通ずるサウンド。クリストフ・シルヴァ、ハファエル・マルチニ、フェリペ・ジョゼ(グルーポ・ハモ)他、ミナス新世代の才能あふれるミュージシャンもこぞって参加。セルジオ・サントスも絶賛する本作は、アレシャンドリ・アンドレス、クリストフ・シルヴァと並びミナス新世代の充実を世界に知らしめる大傑作である!
1986年生まれ、現在27歳はアントニオ・ロウレイロと同い年。ミナス・ジェライス州の州都ベロ・オリゾンチ生まれのイレーニ・ベルタチーニは歌手、作曲家、器楽奏者として現代のポップ・カルチャーと伝統文化の融合を音楽で表現する稀有な存在だ。すでにUrucum na Caraというグループでデビューしているが、ソロとしては本作「Irene Preta, Irene Boa」が1stアルバムとなる。
タイトルはブラジル北東部ペルナンブーコ州出身の著名な詩人マノエル・バンデイラが綴った「Irene no Ceu(空のイレーニ)」からの引用。海から空へ、そして到着点には歌があった、という意味を込めてこのタイトルにしたという。
短いインストゥルメンタルである冒頭曲は子供が演奏するかのように素朴なギターと口笛、スティール・パンからスタート。次第にフルート、チェロ、ピアノなどの高度な楽器が加わっていく。なんとも美しいアンサンブルに聞き惚れているうちに、アルバムは2曲目へ。丁寧にコントロールされつつもどこか母性をたたえたイレーニのヴォーカルが、まるで一つの楽器のように、とても自然に調和してゆく。1曲目はフェリペ・ジョゼ(グルーポ・ハモ)、2曲目はグスタヴォ・アマラル(アレシャンドリ・アンドレスとも演奏活動をともにする次世代SSW)という才人がアレンジを施していることも、この驚くべき完成度の要因だろう。カルロス・アギーレの1stアルバム『クレーマ』にも通ずる素朴と洗練の素晴らしい融合を、本作にも見て取れる。セルジオ・サントス&パウロ・セザル・ピニェイロ作詞作曲による4曲目ではハファエル・マルチニがアレンジを担当。ピアノ、パン、マリンバ、グロッケンシュピールなど複数の打楽器を中心とした疾走感あふれる演奏を聴かせる。アレシャンドリ・アンドレス&ベルナルド・マラニャオン作詞作曲の#6ではウアクチの創作楽器"プラネタリオ"が使用されている。不思議な音色のプラネタリオとイレーニの歌声、マリンバ、チェロ、アコーディオンらとのアンサンブルが聴き所だ。クラシック~ジャズ系ピアニスト=ホドリゴ・ラナがリードしつつマラカトゥにリズム・チェンジしつていく#8、一転、ヴァイオリンとパンを中心とした繊細なアンサンブルを聴かせる#9、クリストフ・シルヴァとのコーラスやエレクトリック・ベース、トロンボーンを用いたアンサンブルが特徴的な#10、ラジオ音のコラージュ、瓶を用いたアンサンブルなど適度に覗かせるエクスペリメンタルな姿勢も好感な#11・・・。シンプルに歌を聴かせる#12,13のラスト2曲まで、ひとつのアルバムとして透徹した世界観が貫かれている。
自由かつユニーク、聴くほどに発見のあるような実験精神と、音楽的な美しさがバランスよく調和したイレーニのデビュー作。ミナス新世代の充実を世界に知らしめる大傑作として、アレシャンドリ・アンドレス、クリストフ・シルヴァと並び人々に記憶される一枚となるだろう。

KRISTOFF SILVA / DERIVA, EM PE NO PORTO

 
縁あってミナスの素晴らしい音楽家のCDを入手することができました。
アーティスト本人からの納品というイレギュラーな経路なので、次回入荷はしばらくありません。
興味ある方は是非diskunion店頭もしくはWEBでお買い求めください。




クリストフ・シルヴァは、ミナス・ジェライス州の州都ベロ・オリゾンチ生まれのギタリスト、歌手、作編曲家。音楽理論や演劇、ダンスといった分野では教授も務める才人である。既に20年近い音楽キャリアを持ち、彼の世代における最も重要な音楽家として、既にブラジルでは認識されている。カエターノ・ヴェローゾ、エルザ・ソアーレス、ゼ・ミゲル・ヴィズニッキといった大御所をはじめ、モニカ・サルマーゾ、アルダ・ヘゼンヂ、ナ・オゼッチ、ヴィルジニア・ホーザ、ミナスジェライス交響楽団、そしてウアクチとも交流を持つ才人だ。


■ KRISTOFF SILVA / DERIVA  (写真左) 
KRISTOFF SILVA / CD / 2,000円(税込)
試聴はこちらで
2013年リリースの『Deriva』は前作『Em Pe No Porto』の作風を更に進化させた作品。とりわけ電子音と生楽器によるアンサンブルにおいて実に興味深い変化をみせている。
セッションさながらにエネルギー迸る二者が衝突するような#1、かと思えば間逆のベクトルで展開されるコミカルな換骨奪胎的アンサンブルの#2。アントニオ・ロウレイロの『So』にも参加していた本作の共同プロデューサー/電子音楽家= ペドロ・ドゥラエス(Pedro Durães)の参加がキーとなっているのであろう。唯一のカバーとなったレジアォン・ウルバーナの"Acrilic On Canvas"含め、繊細だった編曲面に荒々しさ激しさが加わり、前衛性がより顕著となったことでフィジカルに訴えかけてくるようなサウンドを作り出している。
とはいえ「歌」が中心であるのは前作と変わりない。ルイス・タチチ、マケリー・カーに加え、マウロ・アギアール、ベルナルド・マラニャオンという気鋭の作詞家を加えた歌の世界観は、アヴァンギャルドになったサウンドと不思議に相性がよく、気がつくとクリストフのヴォーカルに意識がフォーカスしていく。弦楽四重奏+ヒカルド・ヘルズ(violin)をソリストに迎えオペラのように展開していく#7、耽美的なサウンドを聴かせる#8・・・。引き続きバックを務めるのはアントニオ・ロウレイロやハファエル・マルチニ、アレシャンドリ・アンドレスといったミナスの気鋭の若者達だ。ラストを飾る"Devires"では海の音が微細に漂う中、緻密なオケと数世紀を総括するような格調高い詩世界によって締めくくられる。


■ KRISTOFF SILVA / EM PE NO PORTO (写真右)
JARDIM PRODUCOES / CD / 2,000円(税込)
試聴はこちらで
2009年にリリースされた作品。リリース当時少量が日本でも取り扱われたが、ミナスでのローカルな流通であったため、すぐに入手困難に。希少価値が高まり、日本のみならず各国の某大手通販サイトでも品薄状態が続き非常に入手が困難だった一枚である。
パウラ・サントーロも2012年作でカバーした冒頭の#1に、クリストフの音楽的魅力が集約されている。深海を潜るような奥行きのある電子音と、ハファエル・マルチニ(vib)、アントニオ・ロウレイロ(marimba/drums)らの存在感のある生演奏とを見事に融合させる緻密な作曲能力の妙。自らプログラムを組むほどに電子音楽をはじめとする現代音楽へも造詣が深いクリストフ。ミナス新世代と親和性を持ちつつ、一際個性的なアイデンティティーを獲得している理由がここにある。
もう一方の魅力は歌による魅惑的な世界観だ。自らも作詞を手掛ける一方、優れた作詞家との親密な共作関係も築いている。サンパウロ・アヴァンギャルド・シーンを代表するグループ = フーモ(RUMO)出身のルイス・タチチは4曲で詞を提供。
#2ではタチチと同じフーモ出身のナ・オゼッチを、#10ではバイーア出身ながら現在最高の女性ヴォーカリストの一人として数多くの作品に参加するジュサラ・シルヴェイラを、そして#7ではルイス・タチチ本人がゲスト・ヴォーカルとして参加している。アントニオ・ロウレイロとの共作でも知られるマケリー・カーも5曲に詞を提供している。そのうちの一曲#8では、同じくロウレイロ作品にも参加するヴォーカル・アーティストのマルセロ・プレットがゲスト参加している。
楽曲によっては木管や弦楽アンサンブルも参加。繊細な電子音と生楽器で構成されるオーケストラをバックに、どこまでも深く歌の世界観を感じ入る。バロックの時代から最先端の電子音楽までを俯瞰しつつ作り上げられた恐るべき作品だ。

About

HN:
Eri
HP:
性別:
男性
自己紹介:
ラテン・ブラジル音楽を中心としたワールド・ミュージックのバイヤー。基本的には今まさに聴いている音楽の中から、本気で面白いもの、いいと思ったものを掲載。それと自分が関わっているイベントの告知などもちょっと載せていきます。
【More Profile】
※暫くはこれまで色々なところに書いてきたものを加筆修正してアーカイブ化する作業も並行して行いますので、あしからず。

e-mail: yusukerikawa*gmail.com
*を@に変えて送ってください。

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