● MAKELY KA / CAVALO MOTOR / CD / 2,376円(税込)
アントニオ・ロウレイロやクリストフ・シルヴァといったミナス新世代を代表するアーティスト達と共作を重ねる作曲作詞家=マケリー・カー。1970年代にミルトン・ナシメントやロー・ボルジェスにより提唱されたゆるやかなムーヴメント「クルビ・ダ・エスキーナ」の2000年版「ヘシクロ・ジェラウ」。その中心にいたのがクリストフ・シルヴァ、パブロ・カストロ、セルジオ・ペレレ、そしてこのマケリー・カーといった現在のミナス新世代シーンの中心として活躍する面々である。マケリーはその代表格としてクリストフ、パブロとのヘシクロ・ジェラウの旗揚げ的作品『オウトラ・シダーヂ』に参加。その後もソロ・アルバムを2枚残すほか、主に詩人としてミナスの芸術的音楽シーンの柱として現在まで活躍。アントニオ・ロウレイロ、クリストフ・シルヴァほか現在のミナス新世代の作品に幾度となくクレジットされている人物である。
そんなマケリーの2014年最新作がこちら。ミナス・ジェライスの広大なセルタォン(内陸に広がる旱魃地帯)を1,680キロメートル、2012年の7月から12月までなんと自転車で旅をしながら得たインスピレーションや録りためたテイクをベースに作成されたという。ユニークな経緯ではあるが、ブラジルを代表する文豪ジョアン・ギマランエス・ホーザを例に挙げるまでもなく、セルタォンはブラジルの芸術にとって欠かせない要素の一つ。詩人としての側面も強いマケリーらしい作品と言えるだろう。
マラカトゥやフォホーといったリズムに、伝統的な横笛ピファーノ、そして無骨なマケリーのヴォーカルが絡み合う、オーティックなノルデスチ系サウンドに電子音が揺蕩う「超現実的内陸サウンド」に始まり、"ガーシュインのためのバイアォン"などマケリーらしい捻りの利いた楽曲、管弦楽アンサンブルをバックにギター一本で歌う夜想曲風、ミナスの創作楽器集団ウアクチの楽器を使用した曲、「ヘシクロ・ジェラウ」~サンパウロ前衛派の流れを汲む現代音楽的な響きを包含した楽曲まで...。
音楽的な部分においてミナス新世代の粋と言える高度な部分が存分に注ぎ込まれているのは当然だが、これまで断片的にしか語られてこなかったミナスという地の音楽を、本作は地理的にも歴史的にもよりダイナミックなレンジで捉えている点が何よりも凄い点であろう。ミナス新世代の真打に相応しい、2014年を代表するモンスター・アルバムの誕生である。
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