Respirar o céu @orbit にご来場のお客様、誠にありがとう御座いました。
イベントの頭に行ったケペル木村さんとのトークについて、終了後「あれはなんていうアーティストだっけ?」「間に合わなかったのでまたやってほしい!」という問合せも多く頂きましたので、私が担当したアントニオ・ロウレイロら新世代音楽家の紹介部分はこのブログにまとめることにしました。(追記していきます 最終更新:11/12)
"Artigo de Luxo" Sergio Santos / Mulato (1998)より
作曲 Sergio Santos 作詞 Paulo César Pinheiro
Rodolfo Stroeter (b), Tutty Moreno (dr), Guello (per), André Mehmari (p), Teco Cardoso (soprano sax) e Sergio Santos (vo/g).
ミナス・ジェライス州の南部ヴァルジーニャ生まれのシンガー・ソング・ライター(以下SSW)。ミルトン・ナシメントのアルバム『ミサ・ドス・キロンボス(1982)』へ歌手として参加したのが音楽キャリアのスタートだったようだ。プロデューサー、アレンジャー、ギタリストとして活躍するなかで徐々にSSWとしての才能を発揮し始める。自身名義でのリリースは『アボイオ(1995/廃盤)』から『リトラル・イ・インテリオール(2009)』まで6枚の作品を発表し、そのどれもが細部にまで一貫した美意識の感じられる傑作ばかりだ。母はリオ・デ・ジャネイロ、父はアラゴアス出身と、ミネイロながらブラジル各地の伝統音楽に精通しているのも特徴。音楽制作経験に裏打ちされたプロデュース能力、体全体を共鳴させたオーガニックともスピリチュアルとも形容できるミルトン・ナシメント直系のヴォーカル、技術・経験・創造性に富んだアンドレ・メマーリ、マルコス・スザーノらサポート・メンバー、そして作詞家パウロ・セーザル・ピニェイロとの名コンビによるブラジル音楽の豊かな水脈を高度に抽象化したような楽曲、そのどれもが最高水準。優れたポピュラー音楽家であると同時に優れたトロバドールとして年々存在感を高めるアーティストである。
"ESTAÇÃO FINAL" KRISTOFF SILVA / EM PE NO PORTO(2010)より
作詞作曲 Kristoff Silva
Kristoff Silva (g/vo)
Antonio Loureiro (vib/dr)
Pedro Durães (prog/acordeon)
Pedro Trigo Santanta (contrabass)
Rafael Martini (per/g)
クリストフ・シルヴァは、ミナス・ジェライス州の州都ベロ・オリゾンチ生まれのギタリスト、歌手、作編曲家。音楽理論や演劇、ダンスといった分野では教授も務める才人である。既に20年近い音楽キャリアを持ち、彼の世代における最も重要な音楽家として、既にブラジルでは認識されている。カエターノ・ヴェローゾ、エルザ・ソアーレス、ゼ・ミゲル・ヴィズニッキといった大御所をはじめ、モニカ・サルマーゾ、アルダ・ヘゼンヂ、ナ・オゼッチ、ヴィルジニア・ホーザ、ミナスジェライス交響楽団、そしてウアクチとも交流を持つ才人。アコースティックな楽器のみならず、ウアクチの創作楽器、電子音を組み合わせた緻密なアンサンブルを構築しつつ、最終的に聴き手の意識が彼の歌にフォーカスしていくようなバランス感覚は絶妙。彼よりも若い、いわゆるミナス新世代メンバーであるハファエル・マルチニ、アントニオ・ロウレイロらのバッキングも素晴らしいの一言。
"Mar deserto (com Uakti) " Paula Santoro / Mar do Meu Mundo(2012)
作詞作曲 (Kristoff Silva/Makely Ka)
Artur Andres (arr/fl/torre/marimba d'angelim)
Decio Ramos (marimba de vidro/grande pan/darbuka/torre/marimba d'angelim)
Kristoff Silva (g/vo)
Alexandre Andres (fl)
Paula Santoro (vo)
そのクリストフ・シルヴァをカバーした楽曲を収録した、同じミナス出身の女性シンガー=パウラ・サントーロの通算5枚目となる2012年最新作。ミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタと同じく、ミナスで非常に尊敬されている創作楽器グループ=ウアクチ(Grupo Uakti)が参加。創作楽器による独特の音色はどこかエキゾチックだが、クリストフの作る楽曲の特徴である「歌本位」なバランス感覚はむしろ際立っている。それ以外にもアントニオ・ロウレイロやレオ・ミナックスといったミナス新世代勢、さらには彼らとも親交の深い現代MPBのキーマン=マウロ・アギアールらが曲提供。タイトル通り「海」をテーマにした現代の名曲ばかりが収められている。ちなみに「海」といえば真っ先に浮かぶのがドリヴァル・カイミだが、息子ダニーロ・カイミとその娘(ドリヴァルの孫)アリーシ・カイミの楽曲も収録。
"José no Jabour" Misturada Orquesta / Misturada Orquesta (2011)
作詞作曲編曲(Rafael Martini)
Mauro Rodrigues, Marcela Nunes (fl)
Alexandre Silva (cl)
Vitor Melo Lopes (oboe)
Flávio Freitas (cl)
Jonas Vítor e Estevão Reis (saxfones)
Gilberto Junior (tr)
Alaécio Martins (tb)
Leonora Weissmann, Raquel Liboredo e Leopoldina (vo)
João Antunes (el-g/g)
Rafael Macedo (p/g)
Rafael Martini (p/acc)
Pedro Maglioni (el-b)
Pedro Trigo Santana (contrabass)
Yuri Vellasco (dr)
Mateus Oliveira (vib/per)
ミストゥラーダ・オルケストラはミナスをの活動する大所帯楽団。音楽理論を専攻する教授でありミュージシャンであるマウロ・ホドリゲスがまとめ役を務め、ミナスの才能あふれるアーティストを登用。作曲/オーケストラ・アレンジ/即興/パフォーマンスといった要素を学びつつインストゥルメンタルの可能性を追求し、実際に演奏という形で実践していく、どこか研究所のような側面も持ったユニークな楽団だ。
ミナス新世代において中心人物となっているハファエル・マルチニが作曲/編曲を担当した冒頭曲は、ユニークな構成となっているものの、仲間達による集まりらしく、リラックスしたなかで心底音楽を楽しんでいる雰囲気が伝わってくるようだ。これ以外のトラックではオリジナルのほか、アイルト・モレイラ、アントニオ・ロウレイロ、トニーニョ・オルタ、チャーリー・パーカーの楽曲をカバー。ゲストでトニーニョ、ロウレイロ本人ほか、サンパウロ器楽音楽シーンの中心人物=ベンジャミン・タウブキンも参加している。
"Baião do Caminhar" Rafael Martini / Motivo (2012)
作曲 (Rafael Martini)
Rafael Martini (p/vo)
Alexandre Andrés (fl)
Joana Queiroz (clarinet)
Jonas Vitor (saxofone tenor)
Felipe José (fl)
Trigo Santana (contrabass/cello)
Antonio Loureiro (dr)
Yuri Vellasco (dr)
Edson Fernando (per)
Leonora Weissmann - (vo:track #2)
アントニオ・ロウレイロらとともにミストゥラダ・オルケストラやグルーポ・ハモといったバンドで先鋭的な活動を続けてきたアーティストでもあり、才能あふれるミナスの若手たちの間でも一つ抜けた存在である。初のソロ・アルバムとなった本作は、ハファエルが日頃より活動する仲間たちとともに都会から離れた田舎に集まり、短い期間でレコーディングされたという。優秀な女性歌手でありハファエルの奥様でもあるレオノラ・ウェイスマンが素晴らしいスキャットを聴かせる"Baião do Caminhar"が、まずはオススメだ。
※
こちらで全曲試聴できます。
"Coreia" Antonio Loureiro / Antonio Loureiro (2010)
(作詞作曲) Antonio Loureiro
Fabiana Cozza (vo)
Daniela Ramos (rum-pi/taboca)
Mateus Bahiense (rum/taboca/gan)
Antonio Loureiro (dr/g/p/marimba/le/sinos/unhas/tupa/xequere)
Pablo Souza (bass)
Mauricio Loureiro (cl)
Felipe Jose (violoncelo)
Daniel Pantoja (fl)
ミナス新世代の代表格であり、今年の来日公演でもその類稀なる音楽的才能(の一部)を見せてくれたロウレイロの1st。ここで一つ明らかにしておきたいのは「ミナス」といえど、いわゆる「ミナス・サウンド」の象徴とされるようなミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタからの音楽的影響が、実はあまり感じられないことだ。上記のクレジットを見てもらえばわかるとおり、ロウレイロはマルチ・インストゥルメンタリストだが、専門は打楽器類。巧みなドラム、パーカッション、マリンバを軸にしたこの曲は、作曲面においてもロウレイロらしさが出ている。
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