● ITO GORO / GLASHAUS
SPIRAL RECORDS / JPN / CD / 3,000円(税込)
「今の空気」を感じるアルバムだ。ナオミ&ゴローでの名声、そしてアンドレ・メマーリ、ジョルジ・エルデル、ジャキス・モレレンバウムらが参加、東京とリオ・デ・ジャネイロ録音。これらの要素ゆえブラジル音楽の範疇で語られることも多いであろうが一般的なブラジル音楽のギター作品=グルーヴ感溢れるアルバムとは全く違うのが本作の面白いところだ。例えばアンドレとのデュオM1は、音域の似たギターとピアノによるハーモニーに対し常に細心の注意を払いながらも、それぞれがソロを取り合っていく楽曲。シンプルだがとてもデュオとは思えない残響音までも計算しつくした録音の妙、音色の美しさは部屋の空気を一変させてしまう存在感がある。ジョルジ・エルデル(コントラバス)とのデュオで綴られるM2は更に面白い。M1と同じくテーマ部からそれぞれのソロへという展開は同じであるが、どちらかと言えば地味な役割を演じることの多いジョルジのコントラバスの方が明らかに饒舌なのだ。伊藤ゴロー氏のギターは、上質な絹のように繊細であるがミドル・テンポのフレーズは決して饒舌ではなく、まるで指揮者のように全体に配慮しながらも共演者に気持ちよく演奏させているようである。ではギター・ソロのM4はどうだろう?やはりここでも感じるのはギタリストとしてのジャズやロック的な我というよりも、ひとつひとつの音に対する音色/ハーモニー/残響音へのこだわりだ。帯にも「クラシック・ギターの演奏を軸としてのぞんだ」とある通り、もしもギターだけを聴くのであれば、これはクラシックですよと言ってしまったほうがいいのかもしれない。しかし本作が一筋縄ではいかないのは、抑制されたことで浮かび上がる微細な個性であったり、抑制が生み出す和への透徹した美意識(sense on "quiet"の言葉を借りれば「クワイエットな熱狂」)が反映された結果、普遍的かつ個人的なフィクションとして非常に完成されているからであろう。
○ official site
MOOSE HILL,ボサノヴァ・デュオnaomi&goroとしても活躍する伊藤ゴローが長らくあたためつづけた「ECM」諸作を彷彿とさせるジャズ、クラシック、ブラジル音楽など、ジャンルを超越するインストゥルメンタル作品が遂に完成。自らが奏でるクラシックギターを軸に、チェロやコントラバスとのデュオ、ピアノ、ストリングス・カルテットなどを絡めたアンサンブルで綴った楽曲を収録。その高い音楽性に共鳴する類まれなるハーモニーへの犀利な感覚がブラジル人ミュージシャン達から絶賛された。
多彩な音楽活動を展開するなかで構想が続けられたこの"Glashaus"は、長いキャリアのうちに培われた滝に及ぶ音楽的造詣と卓越した演奏、メロディセンスが結実し誕生した、新たな音楽の地平を切り拓く作品といえるだろう。(レーベルサイトより)
Goro Ito(g)
Jaques Moreienbaum(cello/strings arrange)
Andre Mehmari(piano)
Marcos Nimrichter(piano)
Jorge Helder(bass)
Bernardo Bessler(violin)
All Composed Arranged & Produced by Goro Ito
伊藤ゴロー(作編曲家、ギタリスト、プロデューサー)
ソロユニットMOOSE HILL、ボサノヴァデュオnaomi & goroとして国内外でのアルバムリリース、ライブ等で活動する傍ら、映画、ドラマ、CM音楽も手掛ける。原田知世の直近のアルバム2作、ペンギンカフェオーケストラのトリビュートアルバム等プロデュースワークも行う。2011年にnaomi & goro & 菊地成孔名義で、坂本龍一のレーベル「commmons」から『calendula』をリリースしヒットを記録。
また、サウンドインスタレーション「TONE_POEM」(青森県立美術館)の発表や、原田知世との朗読会「on-doc.(オンドク)」も行う。 2012年は原田知世デビュー30周年を記念し本格的にスタートする「on-doc.(オンドク)」を各地で行なう。また7月21日~9月17日に開催される青森県立美術館の夏の企画展《Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語》のサウンドトラックも担当する。
1. Glashaus
2. Five Steps
3. November
4. Tone Revenge
5. Obsession
6. Wings
7. Beaches
8. A Stamp
9. Glashaus -with strings-
10. Wings -with piano-
PR
COMMENT