● CACAPA / ELEFANTES NA RUA NOVA
久保田麻琴氏監修のコンピレーション「ノルデスチ・アトミコ」のリリースにより日本でも本格的に知られることとなったペルナンブーコの伝統音楽マラカトゥ。なかでもシバ(元メストリ・アンブロージオ)、マシエル・サルー、チネー、アレッサンドラ・レアウなどマラカトゥを現代的な感性でアップデートした音源は近年もっとも衝撃を受けた音楽のひとつです。そんな一連の作品に数多くクレジットされているアーティストがこのカサッパ。ギタリスト/アレンジャー/プロデューサーとしてシーンの要ともいえる活躍を続ける彼が、遂にソロとしての1STアルバムをリリースしたようです。強烈なパーカッション・アンサンブルについては元来定評があり、またそれを伝える音源も紹介されてきたマラカトゥですが、カサッパの視点が面白いのは、打楽器はミニマムにとどめ、弦楽器アンサンブルの美しさにフォーカスしているところでしょう。カイピーラ・ギターも交えつつ複数の弦楽器の残響音が重なり合うようにアンサンブルを構築していく彼のプロデュース作品を聴いたときに、まず連想したのがジョン・フェイヒーでありティナリウェンでした。両者とも録音の妙、そしてギターという楽器の奥深さが作用した結果、フォルクローレ・ミュージックから、ポピュラー・ミュージックへとより普遍的に聴かれるべき強度を獲得した例でしょう。カサッパの音楽も同様に、例えペルナンブーコの音楽を聴いたことがない人でも、哀愁漂うマイナー調のメロディを奏でる弦楽器アンサンブルから土煙が舞い上がるような濃密な空気を感じることができるでしょう。
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