ショーロ・クラブ with ヴォーカリスタスによる「武満徹ソングブック」のコンサートが行われます。
● CHORO CLUB with VOCALISTAS / TAKEMITSU SONGBOOK
SONG X JAZZ / JPN / CD / 2100円
ブラジルの伝統音楽からアヴァンギャルドまでをレンジとする、世界的にも稀有な弦楽トリオであるショーロ・クラブの演奏をバックに、アン・サリー、おおたか静流、松田美緒、おおはた雄一といった個性溢れる日本を代表する歌手達が、武満の美しいメロディと普遍的な歌詞を歌ったアルバム。ショーロ・クラブや武満、現代音楽ファンのみならず、ジャンルを超えた多くの音楽愛好家から反響を呼びました。個人的にも最高の歌と演奏によって「日本語詞の素晴らしさ」を楽しめる久々のアルバムとして何回も聴き込んだ一枚です。
○ SONG X JAZZ 内の販売ページ
アルバムに参加した歌手達が集い、パーシモンの舞台で故人である武満の歌曲を歌う。特別なコンサートになることは間違いないでしょう。
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武満徹ソングブック・コンサート
日本人のかけがえのない日常を歌った武満徹による美しいポピュラー・ソング集。日本を代表するブラジル音楽の弦楽トリオ〈ショーロクラブ〉が7人の多彩なヴォーカリストを迎えて奏でる「タケミツ・メロディ」は、2011年の今を生きはじめる。
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11月19日 (土) OPEN 16:30 START 17:00
@めぐろパーシモンホール・大ホール
〒152-0023 東京都目黒区八雲1-1-1
¥4,000
主催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団
協力:ソングエクス・ジャズ
【 出演 】
◇歌 アン・サリー / 沢 知恵 / おおたか静流 / おおはた雄一 / 松平 敬 / 松田美緒 / tamamix
◇演奏 ショーロクラブ ( 笹子重治 Guitar / 秋岡欧 Bandolim / 沢田穣治 Contrabass )
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武満 徹の「ソング」が集められていながら、「武満徹」の名を、存在を、ほとんど意識しないで聴くこと。ショーロクラブによる『ソングブック』がもたらしてくれるのはそんな希有な体験。複数のシンガーそれぞれの持ち味を生かすことで、けっして恣意的ではない、うたと声との結びつきが生まれる。質の異なった女性の声がつづくとおもえばぽつりと男声が、複数の声が重なるものが、といった思い掛けなさもさりげなく仕組まれたストーリーが、コンサートのなかで、紡がれるはずだ。これらのうたがひとつのながれとなっているのは、どの曲も「武満 徹」によるから、ではない。「武満 徹」でありつつ、ショーロクラブ、であるから。三つの絃の音色とかさなり、からみ。トレモロ、ビート、ラテン的な空気感。そして時のなかを減衰するひびき。
1930年に生まれ、1996年に亡くなった作曲家・武満 徹。ヨーロッパ由来の芸術音楽の延長・拡大されたかたちのコンサート・ミュージックを主としながら、映画や芝居の領域でのこした音楽はまたべつの魅力を持っていた。第二次世界大戦中、禁じられていたシャンソンをこっそりと蓄音機で聴かせてもらい、こんなに美しいものがあるのかと感嘆、音楽をやりたいと希望する。手探りのように楽譜を書き、音のでない紙に鍵盤を書いたピアノを持ち歩く。町を歩いているときピアノの音を耳にすると、弾かせてもらえないかと頼みこむ。進駐軍のキャンプでは、夜にしごとがあるまで、ピアノを弾かせてもらう。結局、音楽はほとんど独学だった。若い芸術家の仲間を得、ストラヴィンスキーに「発見」され、国内外の音楽家はもちろん、安部公房、大江健三郎といった多くの友人を持つ。海外でさかんに作品が演奏される。そうした一方で、愛する映画のために、音楽祭のために、共同でしごとをした。そうした「つながり」のなかで生みだされ、独自に生きはじめた曲たちがここに。
武満 徹は、音楽につくり手の名がついているのは過渡的なもので、将来的に音楽は匿名/アノニマスにむかうと記した。ショーロクラブとシンガーたちの演奏は、従来の「武満 徹ソングブック」から次の段階への、ただ曲のみが親しまれ愛されうたわれ、作曲家の名がいつのまにか消えてしまう段階への、はじまりを告げる。
小沼 純一 ( 音楽・文芸批評家 / 早稲田大学教授 )
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